あなたの一番大切な人(1)
 通路を抜けて、階段を降りるとその先は馬小屋に繋がっている。
  
 もしも城が他国に攻め落とされることになった場合に使用するための裏道であるが、今まで城下街に繰り出すこと以外で使用した試しがない。
 
 愛馬の背中をそっとなでながら、これから行われることを想像するだけで、すでに興奮状態に陥っていた。
  
 馬はその様子を敏感に察知し、ブルブルと嘶いた。

 国王は馬にまたがり、空を眺めた。
  
 たくさんの星と天井にまで到達した月が今晩の楽しみをほんのりと照らしてくれているような気がした。
  
 しかし実際に照らしていたのは、国王ジェスロの心を鷲掴みにする不運な女性のことで、月も星も彼に出会わなければ…という無駄な期待を抱いていたのであった。
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