あなたの一番大切な人(1)
 国王は内心どうでもいいと思いながら、入口の乱闘を見ていた。
 
 孤独か…

 彼もまた自分の立場が嫌になることがあった。

 生まれたときから、すでに後継者という肩書きが決まっていて、何をするのも監視がつき、同じ年頃の人間と普通に生活することもできなかった。

 そんな彼でも、一応城の中には数名の気心のしれた人間がいることで救われた毎日を過ごしている。
 
 それでも無性に自由を味わいたくなるときがあり、そんな時は街にでてきているので、彼もまた髭の男の話がなんとなく理解できた。

 ぼんやりと乱闘騒ぎを見ていると、自分もそこで羽目を外してもいいのではないか、そんな気分になってきた。

 ビールも2杯飲み終え、気分が高揚するのを感じながら立ち上がりかけたとき、その瞬間は訪れた。

 何かをローブのポケットにするりと入れられたのだ。
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