あなたの一番大切な人(1)
 憲兵は一人ずつ立たせて、身体チェックを始めた。

 店内の人間は不安そうに、しかしなすすべもなくされるがままになっていたが、そのうちの一人のポケットから小さな小瓶が発見された。

 小瓶を取り上げた憲兵は隊長のもとに持っていき中身を確認した。

 小さな容器の中を紫色の透明な液体が動いていた。少し粘性のある液体は容器から取り出されると、手のひらの上をコロコロと動いた。

 指でその塊を弾いて、何かを試したのち、隊長は大きなため息をついた。

 「とうとう上に報告せな、あかんほどやな。」

 少しなまりのある言葉で部下に愚痴を漏らし、部下は丁寧に液体を小瓶に移した。

 小瓶を持っていた男は憲兵に両腕をつかまれて外へ連れていかれた。

 外には大きな軍用の荷馬車があり、憲兵は抵抗する人間をその荷台に無理やり押し込み、外から鉄の錠前をかけた。

 わけもわからず一人ずつ身体検査が進められ、中には立ち上がり椅子などを振り回して憲兵に攻撃しようとするものもいたが、急所をはずした発砲に撃ち抜かれ、たいていは床に突っ伏すことになった。

 さすがに状況がまずいと国王は感じたが、とうとう憲兵による身体検査が自分にもまわってきた。

 担当している憲兵は自分のことを知らないようで、特に何もかわった様子はなかった。

 
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