好きなんて、言ってあげない。
空き教室に無理矢理入れられて、ドアが閉められる。
「私、告白の返事してる途中だったんだけど」
「そんなの見てれば分かる」
「分かってるんなら、なんで勝手に現れてこんなところ連れて来るのよ」
伊槻が現れなければ、今頃あの男にいい返事をして恋人になっていたはずだ。
好きか好きじゃないかは別として、伊槻に自慢できたのに。
「邪魔しないでよね。なにもないなら、戻るわ」
そう言った私に返事をすることもない伊槻。
なにも用事がないなら、戻っても大丈夫。
最後に告白の返事の邪魔をした伊槻を睨みつけて、ドアを開けて出て行こうとした瞬間、腕を掴まれた。
「戻っていいなんて、誰も言ってない」
「伊槻に許可なんて取る必要ないじゃない」
そう言うと、伊槻は掴んでいた腕をグッと引いて、私をドアに押し付けた。
背中に感じるのはひんやりとしたドア。
目の前には悔しいくらいに整った顔の伊槻。
私の顔の横には程よく筋肉がついた腕。
これが噂の壁ドンっていう状況なのか、と思っていると。
「あの男に、なんて返事するつもりだった」