好きなんて、言ってあげない。


なに、これ……

唇だけじゃなく、顔にもどんどん熱が集まっていく。


「へぇ、モテるくせにファーストキス、まだだったんだ?そうか、彼氏できたことないもんな」

「い、伊槻のバカ!変態!」


伊槻の言う通り、今のキスは私のファーストキスだった。

いくらモテるとはいえ、実際男と付き合ったことなんてない。

私に釣り合う男を……なんて探していたら、この年齢になってしまったのだ。

しょうがないじゃない、妥協してどこにでもいるような男と付き合いたくなかったのよ。


「俺がファーストキスの相手で、よかったな」

「よくないわよ!私のファーストキス返しなさい!」


なんで、こんなヤツに大事なファーストキス奪われなきゃいけないの……!!

こんなひねくれた私でも、“ファーストキスは好きな人と”なんて夢見ていたのに。


「無理だな。由宇、キスのことで頭がいっぱいだろうけど忘れんなよ?」

「あ、あんなキスで頭がいっぱいになるわけないでしょ!すぐに忘れてやるわ!」


動揺しているのがバレバレなのが悔しい。

というか、なにを忘れるなって言っているのか。
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