好きなんて、言ってあげない。
「俺が、由宇に告白したこと。由宇が好きだってこと、忘れんな」
「あっ、そういえば……」
ファーストキスが奪われる前に、告白されたんだった。
というより、あれは告白のうちに入るのだろうか?
動揺と恥ずかしさで、すっかり忘れていた。
「わ、忘れたわそんなこと。からかわないで!」
また、いつもみたいにバカにしてるだけだ。
キスだって、きっと伊槻にとってはからかってるだけ。
……私のファーストキスを奪ったことは、さすがに許せないけど。
「からかってない。俺は本気だ。忘れたなら、もう一回言ってやろうか?」
「いらないわよ……っ」
冗談だと思ってたのに、急に真剣な顔をして言うから言葉が出なかった。
伊槻の瞳が、私をまっすぐ見つめる。
「……ずっと、からかってたくせに。お昼だって、なにも言わなかったじゃない!」
「だから、焦って由宇にバレないように後ろを付いて行って、告白の途中でここに連れてきた」
「……ストーカーみたい。変態」
「なんとでも言え。由宇が他の男のモノになるのを阻止するためだ」