好きなんて、言ってあげない。
悪びれもなく、しれっとした様子の伊槻。
からかってるわけでもなく、告白は真剣なのが伝わってくる。
「私、伊槻のことなんて……」
「今、返事すんな。これから由宇をオトすんだから」
私の言葉を遮って得意げに笑う伊槻に、ドキッとした。
……いやいや!ないない!
なんでドキッとしてるのよ。
落ち着くのよ、私。
そうよ、相手はいつも私をバカにしてくるムカつく伊槻。
からかわれて、言い返せなくて悔しい思いをしてきたことを思い出すのよ……!
……でも、相手が伊槻じゃなければすぐにOKしていたのに。
伊槻は、悔しいけど整った顔をしているし、女子からの人気も高い。
勉強は私の方ができるけど、それでも上位。
運動だって、できる方だ。
つまり、私に釣り合うであろう男の部類に入る。
ただし、何度も言うようだけど、それが伊槻でなければ、の話だ。
「伊槻のことなんて、好きになるわけないわ」
「いつまでそう言ってられるか。さっきキスしただけで、もう意識しまくりだろ」
「は、はぁ!?意識なんてするはずないでしょ!もう忘れたわよ!」