好きなんて、言ってあげない。

動揺している私を、ニヤニヤしながら見てくる伊槻がムカつく。


「ほんと、さっきも今も、忘れるの得意だな?忘れたなら、もう一回してやろうか?セカンドキスも俺でいいだろ」

「ふざけないで!伊槻なんて大っ嫌いよ!」


いつの間にか緩んでいた腕を離して、教室を出ようとする。

今度は、伊槻が私の腕を掴んでくることはなかった。


「あ、言い忘れてたんだけど。俺のモノになるんだから、明日から他の男の告白受けても断われよ」

「なにそれ。伊槻のモノになんかならないわよ!」


他の男の告白をどうするかは別として、伊槻の告白の返事だけは絶対にOKしない。


「返事は、イエスしか聞かないから。俺の事好きになったときでいい」

「今の返事もノーだけど、これからさきもずっとノーよ」


そう言ってニッコリ微笑むと、伊槻は意地悪そうな笑みを浮かべた。


「そんなこと言ってる由宇に、俺のこと好きだって言わせてやるよ」

「絶対に言わないわよ!伊槻なんてお断りなんだから」


絶対に好きになんてなるものか……!

そう決心して、空き教室を出た。
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