好きなんて、言ってあげない。
私が怒っている本当の理由が分かっていない伊槻を睨んで、返事はしなかった。
***
「由宇ちゃん、伊槻くんとなにがあったの?」
放課後、さすがに私と伊槻の様子を見かねた璃音が聞いてきた。
昨日の放課後のことを全部璃音に話すと、ケロッとした様子で言った。
「伊槻くん、やっと告白したんだね。本当に一途なんだから」
「ちょっと、どうして璃音は驚かないの!?」
「どうしてって、伊槻くんが由宇ちゃんのことが好きだってこと、知ってたもん。ずっと一緒なんだから、見てれば分かるよ」
私と伊槻が腐れ縁だってことは、つまり璃音も今までずっと一緒だったわけで。
伊槻と知り合ったのは小学校だけど、璃音とは幼稚園からずっと一緒。
「なんで言ってくれなかったのよ。言ってくれれば、ファーストキス奪われずに済んだかもしれないのに」
「人の気持ちを勝手に教えちゃ、だめでしょ?にしても、伊槻くんもよく今まで我慢したよね」
感心したように、うんうんと頷く璃音。
「たぶん、伊槻くんは小学校からずっと由宇ちゃんのこと好きだよ。途中で彼女作ってたこともあったけどすぐに別れてたもんね」