好きなんて、言ってあげない。

◆伊槻side


《伊槻side》


俺が、由宇と出会ったのは小学生のとき。

“学年にすごく可愛い子がいる”なんて噂を聞いて、友達と興味本位でその子がいるクラスに見に行ったのを覚えている。

椅子に座っているだけでも絵になるその子が、由宇だった。

誰かが声をかければ花のような笑顔を見せて、誰にでも優しかった。

そのころから、由宇はすでに勉強も運動も人より優れていて、休み時間には由宇の机の周りにたくさんの生徒が集まる。

他のクラスから、わざわざ由宇のクラスに来る生徒もいた。

なんでもできて、誰にでも優しくて、いつも笑顔の由宇。

でも、俺はそんな由宇に違和感を感じていた。


『おい。本原由宇』

『えっと……上城くんだよね?なぁに?』


学年遠足でたまたま同じバスで隣になった俺達。

俺が話しかけると、いつも通りのニコニコ笑顔を見せてきた。


『いつもニコニコしてて、変だなお前』

『えっ……』

『ずっと笑ってばっかりで、気持ち悪い』


今思えば、小学生でしかもそんなに話したことのない女に、こんなこと言うのはよくないと思う。
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