好きなんて、言ってあげない。
まず、そんなこと言われたら、すぐに泣き出すだろうな。
でも……、由宇の反応は俺の想像をはるかに超えていた。
『……私のこと気持ち悪いなんて言ったの、あなたが初めてよ』
一瞬、目を疑った。
さっきまでの笑顔はどこにもなくて、声のトーンもいつもより低い。
『私だって、いつもニコニコしてるのなんて嫌よ』
『じゃあ、なんでお前いつも笑ってるんだよ』
素朴な疑問だった。
笑っているのが嫌なら、笑い続けなければいいだけの話だ。
『別になんだっていいでしょ。いつも笑ってたほうが、色々と便利だから。私のこと、誰にも言わないでね』
そう言って、由宇はいつもの笑顔に戻って他の女と話し始めた。
その、あまりの変わりようにビックリして、何度も由宇をチラチラ見ていた気がする。
俺が見るたび、由宇は周りに分からないようにものすごく迷惑そうな顔をしていたけど。
その日から、自然と目で後ろ姿を追うようになって、会うたびにに意地悪ばかり言った。
『おまえのピンクのリボン、似合わないな』
『うるさいわね!私は可愛いから、なんでも似合うのよ!』