好きなんて、言ってあげない。

みんなの前では優等生の由宇が、俺の前でだけ素で反抗してくる。

他の奴らが知らない、本当の由宇を知ることができた気がして、なんだか嬉しくて。

だんだんと話す回数も多くなって、由宇が勉強も運動もできるわけが分かった。

実は放課後に図書館に通って勉強していたり。

体育の実技テストのために公園で練習していたり。


『由宇ってさ、意外と努力家なんだな』

『みんなには言わないでね。伊槻にはバレちゃったから、しょうがないけど』

『学校の図書館で勉強すればいいのに』

『伊槻、馬鹿なの?そんなことしたら、他の生徒にバレるでしょ』


隠れて努力をしている由宇を知って、いつの間にか好きになってたんだ。

その気持ちは、中学生になっても高校生になっても変わらなかった。


『私、また告白されたのよね』


なんて言葉も、由宇は自分と釣り合う男とじゃなきゃ付き合わないってことを知っていたから聞き流すことができた。

由宇が俺のことを意識することもなくて、彼女がほしい年頃の俺は彼女を作ったりしたけど。

やっぱり俺が好きなのは由宇だって改めて感じただけで、付き合った女を好きになることはなかった。
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