好きなんて、言ってあげない。
いつも短期間で彼女と別れる俺に、由宇はいつものお返しと言わんばかりに嫌味を言ってくる。
嫌味を言われるたびに、“由宇のせいだ”って何度も言いたかった。
由宇が俺をずっと夢中にさせてるからだって。
―――それで、結局我慢の限界で自分の想いをぶつけてしまったってわけ。
『大きなお世話よ。彼氏なんてすぐにできるわ。私のことが好きな男なんて、たくさんいるんだから』
なんて言うから、さすがに焦って告白の返事をしに行く由宇の後ろをついていった。
『さすがにそれはないよ、伊槻くん。そんなに心配なんだったら、さっさと告白すればいいのに』
璃音にそう言われたけど、告白ができたらとっくにしている。
今まで告白できなかったのは、なんとなくタイミングが掴めなかったから。
こんなこと璃音と由宇に言ったら、“ヘタレ”だってバカにされそうだなんて考えながら、体育館の影から由宇の様子を見る。
予想通り、告白に対していい返事をしようとした由宇の腕を引いた。
『悪いけど、お前の告白に対する由宇の答えはノーだ』
突然俺が現れて驚いている男にそう言って、由宇の手を握って校舎の方に向かって歩いた。