好きなんて、言ってあげない。
「由宇ちゃん、顔だけは整ってるもんね!」
「ちょっと、顔だけってなによ」
璃音は、ときどき、可愛い顔とふんわりした雰囲気からは想像もできないくらいの毒舌を発揮することがある。
言っておくけど、私は顔がイイだけの女じゃない。
成績だっていつも上位をキープしているし、運動神経だっていい。
先生からの信頼も厚い。
そんな私は、まさに全校生徒の憧れそのもの。
「由宇ちゃんに憧れてる生徒に、由宇ちゃんの本性教えてあげないと可哀そうだよ」
「言ったところで、きっと誰も信じないと思うけどね」
可哀そうってなによ。
外面ばっかり見て、騙されるほうが悪いと思わない?
璃音がみんなに言ったところで、きっとさっきのバカ男みたいな反応しか返ってこないと思う。
私は普段から完璧な“可愛くて優しい優等生”を演じているわけで、璃音の一言で私の本性がバレるなんてヘマはしない。
「由宇、お前さ、いい詐欺師になれると思うんだけど。どう?」
私の後ろから聞こえてきたのは、璃音の声とは別の男の声。
「はぁ?詐欺師なんてなりたくもない」