好きなんて、言ってあげない。
「全校生徒……あぁ、教師も騙してるんだった。こんだけの人数騙せるなんて、詐欺師の才能あるんじゃねぇの?」
ムカつく……!!
いきなり会話に入ってきて、私をバカにするこの男は上城伊槻(かみしろ いつき)。
小学校からの腐れ縁で、璃音と同じく私の本性を知るうちのひとりだ。
「伊槻は、いちいちムカつくのよ。話しかけてこないで」
「事実述べてるだけだろ?短気だな」
ハッと鼻で笑った伊槻に、さらに腹が立つ。
「……地獄に落ちなさい」
「あれー、みんなの憧れの優等生の本原由宇さんがそんな言葉使っても大丈夫なんですかー?」
ニヤニヤしながらバカにしてくる伊槻を、どうにかしてこの世から抹消したい。
そもそも、どうしてこんな男に本性がバレてしまったのか。
……そうだ、まだ“可愛くて優しい優等生”を演じるのに慣れていない頃だったからだ。
小学校に上がってから猫をかぶり始めて、伊槻にバレたのは小学校に入学して一か月が経ったくらいだったはず。
ムカつくくせに、変なところで鋭い伊槻はあっさりと私の本性を見抜いてしまった。