好きなんて、言ってあげない。

これで伊槻からバカにされなくなると思って舞い上がってた私は、伊槻が焦った表情をしていることなんて気付かなかった


***


放課後、呼び出された場所は体育館裏。

昼休みとは違う場所で、なんとなくイメージがよくない場所だ。

だって、体育館裏って漫画とかケータイ小説とかで怖い女子に呼び出される定番の場所でしょ?

別に、私は呼び出される心配もないんだけどね。


「本原さん……?」

「あっ、あなたがこのお手紙くれたんだよね?ありがとう」


そう言って、ニコリと微笑むのが決まり。

案の定頬を赤く染めた男は、お昼のバカ男よりも顔のレベルは上だと思う。

中の上くらいかな。

どれだけ意気地のない男かと思っていたけど、うん、雰囲気も悪くない。


「俺の告白に対する返事聞いてもいいかな」

「もちろん……」


“よろしくね”と言おうとした瞬間、突然後ろから回ってきた腕にグッと抱きしめられた。


「悪いけど、お前の告白に対する由宇の答えはノーだ」

「えっ……伊槻!?」


私を抱きしめたのは、少し焦った様子の伊槻だった。
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