好きなんて、言ってあげない。
そして、放心状態の男をその場に残したまま、私の手を引いてどこかへ向かおうとする。
伊槻が私の手をぎゅっと握ってるから、解こうにも解けない。
「ちょっと、伊槻!どこ行くのよ!まだ告白の返事してない!」
「うるさい。黙ってついてこい」
意味分かんない。
お昼には、私に彼氏ができないことを馬鹿にするし。
告白に対する返事を返そうとしたときにいきなり現れて、こうやって私をどこかへ連れて行こうとするし。
「伊槻の考えてることが、全く理解できないんだけど。どういうこと、これ?」
そんな私の言葉も無視して、歩き続ける伊槻。
放課後の校舎にはあまり生徒がおらず、誰かに助けを求めることも難しそう。
握られてる手は解けそうもないし、諦めて伊槻についていくしかなさそうだ。
「……ここ、入っちゃだめなんじゃないの?」
「今は、俺の前では、“優等生”の由宇じゃないだろ?」
連れてこられたのは、先生たちから入らないように言われている空き教室。
入らないようにって言ってる割には、鍵がかかってないのが謎だけど。