千年の時空を越えて
次に、目が覚めると、見慣れた天井があった。
ふと、視界に、水の入った紙風船のようなものが浮かんでいる。見たことがない何かが僕の体に刺さっている。
繋がっている所を引きちぎろうとしたら、雪の字で<外したら、絶交です。>って書かれていた。
総「あぁ・・・。雪が、付けたんだ・・・。」
僕・・・。池田屋の奥の部屋で男二人と斬り合いしてて、血を吐いて、意識が無くなったんだっけ・・・。誰か、あの後、すぐに入って助けてくれたんだ・・・。
すると、襖が開き、僕は、彼女かと、期待する。
でも、そこにいたのは、丞ちゃん。
明らかがっかりした顔をわざと見せる。
丞「目ぇ、覚めたんか?」
総「うん。この手当、雪だよね?危うくこれ、外して、絶交されるとこだった。」
すると、丞ちゃんは、力無く笑って、
丞「これは、俺がやった。雪に教えてもろて・・・。」
総「ふーん。ありがとう。でもどうせなら雪に手当てしてもらいたかったなぁ~。で、雪は?」
丞「・・・。」
丞ちゃん、何も答えない。僕は、もう一度、強く聞く。
総「雪は?どこ?」
すると、丞ちゃんは、小さな声で、「眠ってる。」と一言。
総「なんだ!驚かさないでよ。なんかあったかと思うじゃない。」
丞「・・・。意識がない。」
総「え?」
何で、雪が?僕が、起きあがろうとすると、丞ちゃんが、僕の肩を押さえる。
丞「まだ、起きたら、あかん。この“てんてき”がなくなるまでジッとしとき。」
総「雪が倒れてるのに、ジッとなんて出来る訳ないでしょ!!」
すると、丞ちゃんが、文を差し出す。
開けてみると、雪の字で
<総司様。
山崎様の言うことちゃんと聞いてください。
元気になるまで会いません。
総司様の元気なお顔が見たいです。>
と書かれていた。僕のことよくわかってる。
丞「目が覚めたし、“てんてき”が終わったらええで・・・。まぁ安静にはして欲しいけどな。“てんてき”が終わったら教えて。」
そう言って、丞ちゃんは出て行った。
そして、僕は、“てんてき”が終わるのをジッと待つ。
その間も、嫌な咳は残ったままだ。
血を吐いて、咳が出るって、まるで・・・。
まさかね・・・。嘘だよ。風邪が流行ってるから、うつっただけだ。僕は、そう自分に言い聞かせていた。
早く、雪の顔が見たいなぁ。
そう、思うと、また、睡魔が襲ってきて、僕は、瞼をゆっくり閉じた。