千年の時空を越えて
雪「あ!人!人がいます!」
総司さんも崖の下を覗く。
総「本当だ。」
自分に巻いていたサラシを先ほどの木に結びつけて、それを崖の下に投げる。そして、タブで男の体に変装する。
雪「私、行ってきます。」
総「え?大丈夫?」
雪「はい。こういうの慣れてるので。行ってきます。これ、お願いします。」
総司さんに刀を預け、サラシを伝い降りた。
すると、自分と同じ位の年の女の子がいた。
雪「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
女の子「はい。大丈夫です。」
雪「ちょっと、窮屈ですけど我慢して下さい。」
そう言って、持っていた、たすきで自分と女の子を縛る。
そして、女の子をおぶり、サラシを伝い登る。女の子は、震えている。安心させるため話しかける。
雪「私は、乾 雪之助と申しますっ。あなたの・・・お名前は?」
菊「私は、菊と申します。」
雪「可愛いっ、お名前っ、ですねっ。」
自分と同じ位の体重を抱えて崖を登るなんて久しぶり・・・。はぁはぁと息が上がる。
雪「どうして、落ちちゃったんですか?」
菊「そこの花が欲しくて・・・。」
ふと見ると、崖の上から少し降りないと届かない所に、綺麗な花が咲いていた。
雪「お花・・・。好きなんですか?」
菊「ええ。病のばば様がこのお花が好きで・・・。花見たら元気がでるかと思いまして・・・。」
雪「なるほど・・・。」
総司さんが上から、サラシを引っ張ってくれている。
上まで登りきって二人を繋いでいたたすきを外す。
雪「ちょっと、待ってて。」
私は二人を残し、再度、崖を降りる。
総「ちょっと!雪!危ないですよ!」
雪「大丈夫です。」
降りて、さっきの花を摘み、戻って手渡した。
雪「どうぞ。」
するとお菊さんは、真っ赤になって、固まっている。
雪「?これでしょ?」
菊「あ・・・。は、はい!ありがとうございます。」
雪「どういたしまして。」
あ・・・。お菊さん、顔が汚れてる。
三人で河辺まで行って、手拭いを浸す。ギュッと絞って、お菊さんの顔を拭いてあげる。
するとまた、お菊さんの顔が赤い。怪我してる?
雪「大丈夫ですか?どっか痛い?」
お菊さんは首をプルプル横に振る。
総「帰りましょうか?」
雪「はい。」
菊「あっ!」
腰が抜けてる・・・。
私は、羽織を脱ぎ、お菊さんに着せおぶって帰る。
これって普通、男がするよね?総司さんは、「雪じゃないから嫌だ。」とかワガママ言うし!総司さんには先に帰ってもらい、土方さんに報告をお願いした。