千年の時空を越えて
先ほどの木で丞さんを拾い、しばらく飛んで、丘の上で、降りる。
丞さんは、気を失ってしまったよう。
雪「あらら。絶叫系は苦手なのかも。ごめんね。」
そう呟き寝転がす。
すると、鋭い殺気が刺さる。
振り向くと、刀を抜いた、高杉さんが、こちらを睨みつけ間合いを取っている。
雪「初めまして!私は、春風と申します。」
晋「!?」
そう、春風はあなたの名前・・・。諱だ。
雪「私は、未来が少し見える者です。あなたは、これから、長州藩にとって必要になるお方。あの戦で、命を落としてはいけないです。だから、助けに来ました。」
晋「何を戯けた事を。」
雪「あなたのココで考えてる事を実行してください。」
そう言って、こめかみをちょんちょんと叩く。
晋「!?・・・。お前は、何者だ。さっき、空を飛んでいた・・・。」
雪「あー・・・。陰陽師的なやつです。」
それは、これで逃げるしかない。本来ならば、睡眠薬飲ませる所だけど、男二人は流石に無理だろうし。それに、ここで置いていったら、誰かに殺られるかもだし。
晋「オイ。さっきの場所へ戻せ!」
雪「だから!無理です!元々ご実家にいるはずです。なんでここにいるんですか!?」
晋「さっきの所には仲間がいる。見捨てては行けない。」
雪「彼らは・・・。この戦で亡くなります。」
晋「っ!嘘をつくなっ!!!」
雪「あなたの友人の久坂様は、鷹司邸で流れ弾に当たって切腹されます。寺島様も。入江様は敵に見つかり・・・。」
晋「そんな・・・。」
雪「あなたがあそこにいたら巻き添えになるかもしれない。あなたは、松陰先生の教えを貫くんでしょう!?この後、色々やるべき事があるはずです!あなたはこれからの長州藩の危機を何度も救っていらっしゃいます。だから!」
晋「わかった。」
何か思う所があるのかも・・・。
晋「オイ。春風・・・。お前は、敵か、それとも・・・。」
雪「どちらでもありません。ただ、今回は助けただけ。次は、敵かも・・・。」
晋「ふっ。」
口角を上げてニヤリと笑う。
雪「吉田 松陰先生の教え子さんだったんですよね?」
晋「先生を知っているのか?」
雪「はい・・・。お会いしたことはありませんがお噂は色々と。どんな方なんですか?高杉様を見ているととても、素敵な方なんだろうと思います。」
晋「先生は・・・。」
高杉さんは、キラキラした目で、吉田松陰の事を語っていた。
・・・。止まらない。色々質問してるからだけど・・・。
すると、丞さんが目を覚ます。
丞「うわぁ!怖かった!」
雪「おはようございます。」
二人、睨みあってるよ~。
丞「雪。副長に報告するから。」
低い声で、言われる。
雪「はい。もちろん。そのつもりで来てもらったし。」
丞「え?」
雪「私も後で、報告します。私は、この人、送ってからにします。」
丞「じゃあ、先行ってる。」
雪「はい。じゃあ、私達もそろそろ・・・。」
晋「いや。まだ、話は終わってない。」
ガシッと腕を掴まれ、それから、延々と話が続く。
いつの間にか、真っ暗・・・。
雪「あのぉ・・・。」
晋「春風!」
雪「はい。」
晋「俺は、お前が気に入った!俺の女になれ!」
雪「はぁ!?なんで・・・?」
晋「お前ほど話の合うおなごは初めてだ。だから、お前ともっと、話がしたい!」
雪「私は、その恋仲いますので・・・。ごめんなさい。」
晋「そんなもの関係ない!俺は絶対、お前を手に入れる!また・・・。会えるか?」
雪「運命が交われば会えるんじゃないですか?」
晋「そうか・・・。俺は、また、会えると思う。」
雪「では、行きましょう。あ・・・。一つだけ。あなたが次、起こす情報を敵に渡します。あなた様がいかほどのお方か見せていただいてもよろしいですか?」
すると、彼は、ニィっと口角を上げる。
晋「臨むところだ。」
そして、彼は、脱藩中だということで遊廓まで送る。歴史上、実家だった気がするんだけど。まぁいっか。
はぁ・・・。天才って何考えてるかわかんない。でも、この人の話しは面白い。
しかも、今から、土方さんの拷問・・・。ため息しか出ない・・・。