千年の時空を越えて
驚きの出来事は、すぐに起こる。
私は、出勤すると、着替えさせられ、通りが見渡せる赤い檻の中に座らされる。
男が、女を物色している。
あぁ・・・。コレよく見るやつだ・・・。ここで誰を指名するか決めるやつだな。ここまで勉強してないから名前わからないけど。
まぁ3倍稼ぐためにやりますか・・・。仕事モードのスイッチを入れる。
ジッとこちらを見ていた男を妖艶にジッと見つめ返し、少し微笑む。
すると、男は、真っ赤になり、店に入ってきた。
そして・・・。「秋風ちゃん。」
掛かったか・・・。
ここでは名前は秋風にした。何でも良かったが春風は使ったし女の心は秋空っていう意味も込めて。
部屋に入ると先ほどの男が座っている。
雪「ようこそ。初めまして。私は、秋風と申します。」
男「あぁ・・・。こちらへ。俺は、相田 彦兵衛と申す。」
雪「失礼します。」
私は、男のそばへ寄り、お猪口を握らせ、お酒を注ぐ。
雪「どうぞ。」
男「あぁ・・・。すまない。」
そう言うと一気に飲む。そしてチラリと私を見て、また顔を背ける。
惚れたか・・・。
男は、恥ずかしいのかグビグビお酒を飲んで真っ赤になっている。
「秋風ちゃん。」
外から声がかかる。
雪「彦兵衛様。今宵は呼んで頂きありがとう御座いました。また、お会いできる日を楽しみにしています。」
ニコッと笑い、ウィンクをすると、真っ赤になり、「また、来る。」と軽く手を上げた。
そして、また、檻へ戻る。
それを繰り返す。
私は、芸妓の言葉遣いなどは気にせず、普通にした。髪型も、池田屋の時に、バッサリ切られて、まだ、伸びていない。短い髪の毛を上手く留める。
ここでは、目立つようわざと、他の人達とは別の容姿になる。
それが、また、反響を呼んだ。『一見さんお断り』を無くしてもらい、誰でも入ってもらう。一見を馴染みに変えた。
他の芸妓さんに恨まれないように、私の次に入る人には、私の3%の収入を渡す。
いつの間にか、私が、檻の前に行くと、人集りが出来ている。
そんな芸妓生活数日後の事だった。