千年の時空を越えて
その日の真夜中。日が変わりついにこの日が来た。
元治2年(慶応元年)2月21日。
私は、門の前にいた。
このまま一人で、誰にも会わずに朝を迎えたい。そう願って・・・。
スッと、人の気配がした。
顔を上げると、山南さんが、微笑んでいた。
私は、目から一気に、涙が溢れた。
雪「山南様・・・。行ないで・・・。お願いします!」
私は山南さんの腕を掴んだ。
山南さんは、ギュッと私を抱きしめ、ポンポンと背中を優しく叩いた。まるで、子供をあやすように。
山「雪・・・。ありがとう。やっぱり僕は、このまま自分の儀と違うことをするのは耐えられない。例え、法度に背いたとしても悔いはないよ。今は、この新選組は殺戮集団化しつつある。僕は、それを変えたかった。でも僕の声はもう、近藤さん達には届かない。伊東君なら以前のような、攘夷集団に戻せるかもしれない。だから、雪・・・。伊東君の事、助けてあげてくれないかな・・・。」
なんて、答えれば・・・。だって、伊東さんだって・・・。答えられないでいると、
山「ごめんね。困らせたよね・・・。きっと、皆、悔いの無いように進む筈だよ。」
私は、手紙を渡した。最後の望み。
雪「山南様。これ、私からの恋文です。この門を出たら、必ずすぐ読んで下さい。約束です。信じています。山南様が幸せになられるのを・・・。」
私は、山南さんに口づけた。
少し驚き顔の彼に私は、
雪「景気づけです!どうか、どうか、お幸せにっ・・・。」
すると、山南さんはニコッと笑いポンと私の頭に手を置いた。
そして、彼は、門を通り抜けた。
門を通り抜け、しばらくして、先ほど雪に渡された文を開く。
山「ふっ。くくく。・・・。雪、ありがとう。僕は、優しい妹を持てて幸せだったよ。」
そして、暗い夜道を進んでいった・・・。