千年の時空を越えて
伊東さんの歓迎会で、角屋へ行くことになった。
総「はぁ・・・。」
あれ以来、物凄く、溜め息が増えている。
そして、部屋に入ると、紙と筆を渡された。
<約束事>と書かれた、その紙には、秋風を呼ぶに当たっての細かい約束事が、書かれている。
総「一切、手を触れることを禁ずる・・・。部屋にいるのは1日一刻のみ。他の芸妓を・・・。」
その紙を読んでいると、
新「雪のやつ、こーんな何も出来ない状態で、ただ酒注いでるだけで、ここの一番にのし上がったらしいぜ!」
左「そうそう、それにこの約束事守れなかったら、もう、雪には、会えないらしい。しかも、触れようもんなら、手をひねり上げられるらしいぜ。」
新「俺、それ見たことがあるぜ!雪のやつ、ひっくい声で『調子に乗ってんじゃねぇぞ、コラァ。』って言っててよぉ、芸妓がそんな事を言ってどうすんだって笑ったんだよ!」
そうなんだ・・・。少し、黒い靄が軽くなる。
そして、芸妓姿で入ってきた、彼女は、次々に、酒を注いでいる。
その姿を、見ながら、あることを思い出していた。
それは、数日前、夜中に縁側近くで、土方さんと抱き合っていた事。雪は、寝ていたようだったけど、その後、土方さんが、自分の部屋に連れ込んでしまった。
その事が、頭の中をグルグルしていた。
そんな事を思い出していると、雪が僕の所へ来た。
どうぞとお猪口を渡されたが、断った。
なんか雪が遠くに行ってしまったような気持ちになったから・・・。
すると、目の前に、僕の好きな店の団子が出てきた。
これは・・・。
ふと、以前、雪と一緒に行った甘味処を思い出す。
あの時も、こうやって食べさせてくれようとしてたっけ・・・。
僕は、みんなの前で少し、恥ずかしい気持ちもあったが口を開けた。
甘い香りが口に広がり、気持ちも少し軽くなる。
すると彼女は、「前にも、こんな事ありましたね」と微笑んでいた。
僕は、思い切って、今のこの気持ちを話そうとした。
総「そうですね・・・。あのっ。」
すると、彼女は、平助に呼ばれた。
彼女は、僕に聞いてくれたけど、また断った。
まぁ、皆がいるところで話する事もないか・・・。
僕は、沢山置かれた団子を味わった。