千年の時空を越えて
部屋から出ると、雪がいた。最期の見送りだと。
僕たちは、部屋へ移動した。
そういえば、近藤先生は、山南さんの文を雪に渡さないのかな・・・。
皆が待っている部屋で、近藤先生が、山南さんの切腹について話をしていた。
すると、
丞「失礼します。」
そう言って、丞ちゃんが入ってきた。
丞「報告致します。雪が、明里の住み込みを決めるため、相田の嫡男と恋仲契約を結びました。」
総「え・・・。」
全員「!」
新「オイ。相田の嫡男ってあの・・・。」
左「なんか・・・。ヤバい奴だろ?アイツの嫁になったおなごは、皆、しばらくして、行方知れずになってる・・・。」
丞「遊廓の秋風の時に惚れられていて毎日のように通っていました。」
総「アイツか・・・。」
土「山南さんの最期の任だからか・・・。わかった。それは、俺が預かる。」
丞「はい。」
近「この文に何か書いてあるのかも知れない。」
そこで、文を読んだ先生がいきなり泣き出した。
全員「!?」
土「オイ!かっちゃん。どうした!?」
無言で、文を渡され、目を通した土方さんが息を飲む。
新「どうした!?」
今度は、新八さんが受け取り、声に出して、読んでくれた。
新「雪へ。
雪、私は、本当に、君に会えて良かったと思う。
僕の運命が決まっているのに、君は、それに、選ぶ道をくれた。選ぶ時間をくれた。
未来を知っている君には、さぞ苦しい想いをさせたと思う。
僕は、最初、甘い考えがあった。
ここを出て行ったら、僕の気持ちを近藤さんがわかって意見を変えてくれるんじゃないかと。
すまなかったと。でも、君は、出ていったら最後だ。と言った。
それで、覚悟を決めて出て行けた。そんな、私を、君は、最後まで、生かそうとしてくれた。
あんな恋文は初めてだった。おかしかったな。本当にありがとう。
僕は優しい、妹を持てたことを誇りに思う。
僕の人生に悔いはないよ。ありがとう。」
全員「・・・。」
皆、涙を堪えていた。
左「恋文ってなんだよ・・・。」
近「これかもしれん・・・。」
そこには、雪の字で
『兄上様
大津のお宿には、バカがつくほどの甘味好きの弟が鬼の形相で来ると悪夢を見ました。
見ると、構いたくなるあなた様の弟です。
ですので、どうか、別の場所へ。明里姉さんとお幸せに。』
総「馬鹿がつくほどの甘味好きの弟って・・・。」
土「そのまんまじゃねえか・・・。」
平「雪は、わかってたのか・・・。山南さんが記した場所も、総司が行くことも・・・っ。」
その時、外で、雪が、終わりましたと言いにきた。
皆で、手を合わせに行こうということになって部屋に入った。
全員「!!!」
そこに横たわる山南さんは、まるで眠っているかのようだった。
あの時、切り落とした首もとには、白い布が巻かれていた。
一「切腹した後とは、思えないな・・・。」
伊「安らかな顔つきだ・・・。」
土「アイツはまた、無礼な事を。」
しばらくして、皆は部屋に帰って行った。
総「ねぇ・・・。山南さん・・・。僕が、宿に着いた時に笑ったのは、雪の文のせいですよね?馬鹿がつくほどの甘味好きの弟が鬼の形相で来たって思ったんでしょ?やだなぁ。僕は、鬼の形相なんかしてませんでしたよ?・・・山南さんがしたことは、僕は、やっぱり、許せません・・・。でも悔いが残らなくて良かった・・・。恨んで逝くのと、晴れ晴れした気持ちで逝くのでは、全然、違いますもんね・・・。」
僕は、しばらく、山南さんと、思い出話をした。