千年の時空を越えて
二人が、帰った後、高杉さんに、呼ばれた。
高杉「はぁ・・・。疲れた。うの・・・。癒せ・・・。」
高杉さんは、そう言うと、私をギュッと抱きしめた。
雪「高杉様。お疲れ様です。」
お茶を出した。
私は、先程の男達との話しをしたくてうずうずしていた。
資料には、載っていたが、やはり、本人が、目の前にいるのだ。
聞きたい!
雪「先程の男達は・・・。どこかで、見た気がします・・・。」
高杉「お前ほどの芸妓なら知ってるかもなぁ・・・。」
雪「はい・・・。確か・・・。薩摩系のお方・・・。だったような・・・。」
高杉「あぁ・・・。うの・・・。あいつ等が何をしに来たか解るか?」
雪「いえ。」
本当は知ってる。薩長同盟のお誘い。
高杉「犬猿の仲の長州と、薩摩が手を組もうという話しだ。手を組んだら、殿の朝敵という落胤を削げるとのことだ。」
雪「良いお話ではありませんか?」
高杉「だと思うだろう?しかし・・・。この話に乗れば、長州は薩摩の下だ。しかも、西郷が、本気で考えているなら、あんな、脱藩浪士ごときに話を持ってこさせまい。」
雪「もっと、薩摩の上役の方が来るということですか?」
高杉「あぁ・・・。向こうも、様子見ということだ。」
雪「さすが、高杉様。天才と言われるだけある人・・・。」
高杉「何か言ったか?」
雪「いいえ。何も。」
私は、歴史に名を残す人の偉大さを知った。
だって、藩主というのは、この時代の人の武士にとって命を懸けて護る人・・・。
その人が、朝敵と言われて、権力を失った。
家臣としては、復権出来るというのは、のどから手が出るほどのことだろう。
冷静と言われた桂小五郎も、坂本龍馬の話に乗ってしまうほどだ。
それなのに、この人は、それを蹴った。
私は、高杉晋作という人に会えて、話が出来たことを嬉しく思った。