千年の時空を越えて
しばらくして・・・。
僕は、境内でわらしと遊んだ後、土方さんの部屋に来ていた。
総司「そんなに書簡仕事ばっかりで、楽しいですか?」
土方「お前の分もこっちに回って来てんだよっ!バカ!」
総司「それは、それは、ご苦労様です!干菓子、食べますか?」
土方「いらねぇよ!何で、ここで、食べるんだよ・・・。他へ行けよ!」
僕は、がらんとした部屋に戻るのが嫌なのかもしれない。
雪が、来るまでは、慣れた殺風景だった部屋も、雪が、来てから、変な物がやたらと増えた。
おなごが好きそうな色の物だが、何に使うかわからない物。
たまに、プカプカと部屋に浮いていて、驚いて、何度か、刀を振るって、雪に、怒られたっけ・・・。
総司「あぁ!もぉ!雪に、会いたい!触れたいよぉ・・・。」
土方「うるせぇよっっ!あっち行け!」
総司「嫌です!間者で長州に行かせるなら、丞ちゃんだけで、十分だったじゃないですか!それなのに、雪まで行かせた、土方さんに八つ当たりですよ。」
すると・・・。
「失礼します。」
この声は、丞ちゃんだ。
・・・って、事は、雪が帰ってきた!?
胸を、高鳴らせて、襖を見つめる。
でも・・・。
部屋に入ってきたのは、丞ちゃんだけ・・・。
途中で、どこかに寄ってるのかな?
しかし・・・。
総司「あ!丞ちゃん!おかえりー!雪は?」
丞「・・・。」
え・・・?どういうこと?
総司「丞ちゃん・・・?雪は?何で一緒じゃないの?」
丞「雪は、他に、何かやることがあると・・・残ったんです。」
総司「はぁ!?置いてきたってこと!?」
丞ちゃんから、今までの報告を聞いた。
何かがブチ切れた。
ドカッ。
僕は、丞ちゃんを思いっきり殴った。
総司「何で、首に縄つけてでも、連れて帰ってこなかったんだよっっ!その状況は、かなり、危ないじゃないかっっ!」
間者を助けたということは、自分が間者と言ってるのに等しい。しかも、おなごに助けられて、そんな状態で、自分だけノコノコ帰ってきた、丞ちゃんに怒りが抑えられなかった。
しかし・・・。丞ちゃんも何か思うことがあったようで、僕の胸倉を掴んできた。
丞「俺かて・・・。俺かて・・・っ。連れて帰りたかったけど・・・。未来のお役目や言われたら、引くしかないやろっ!俺かて・・・っ。」
土方「話は、解った。で?雪が、間者の可能性は?」
総司「何、言ってんですかっ!雪は、今回、丞ちゃんを助けたんでしょ?それなら・・・っ。」
土方「疑うのは、当たり前だ。あいつは、前科がある。長州と繋がっていたなら、好都合だろ?山崎をわざと、襲わせたかもしれねぇ。」
この人は・・・。
凄く苦しそうな顔しちゃって。
その表情は、自分の気持ちを、認めているようなものだ。
副長という立場では疑わないといけない。
丞「間者の可能性は、低いです・・・。俺を、助けてくれた時・・・多分、あれは、未来の道具で助けてくれました。火の玉騒ぎになってたんです・・・。だから、もし、雪が“あっち側”なら、未来の物は、使わないはずです。」
土方「向こうの奴も、雪の事情を知ってるかも知れねぇ。」
丞「それは、ないと、思います。奇兵隊の総督である、高杉晋作は、かなりの切れ者です。そんな奴が、雪の事情を知ってたら、何かしら、すると思います。でも・・・。あの時の雪は、いつもと変わらんかった。それに、もし、雪が、長州と繋がっていたなら、薩摩との関係なんかを、俺に、話すとは、思えません。」
土方「なるほどな・・・。確かにだ・・・。だったら・・・。雪が無事かどうかだな。迎えには行けねぇし・・・。」
丞「俺がもう一度・・・。」
土方「お前は、もう顔が知られてる・・・。別の奴に行かせるか・・・。この件については、追って沙汰する。山崎は、少し休め。」
丞「はい・・・。」
丞ちゃんは、部屋を出ていった。