千年の時空を越えて




私は、用意を済ませると、空中ボードに乗り、長州へ向かった。




雪「はぁ・・・。はぁ・・・。さすがに、これで、5時間は疲れる・・・。」




私は、急いで、高杉さんの所に向かう。



ん?あれ?



『お前はうのではないっ!どっか行け!』



『何を仰っているのですか?私が、うのです。』



『違うっ!お前、うのをどこにやった!』



『はぁ・・・。』




誰かいる・・・。



しかも、“うの”って・・・。




私は、男装のまま、門を叩く。






部屋に、通されて・・・。





二人が、私を見た。



高杉・うの?「あ・・・。」



高杉「うのっっ!」




雪「っ!」



この人には、わかるの?




私が、高杉さんの枕元に座ると、弱々しく手を伸ばして来て、私の膝に手を置いた。




高杉「うの・・・。会いたかった・・・。」




雪「谷殿・・・。」




私は、骨と皮になった、細い手を握った。




すると、少しだけ、その手に力が入るのがわかった。




隣にいる女は、私にそっくり・・・。



私に化けている。




私が、うのになっていることを知ってる人・・・。





もしかして・・・。



すると、うのと呼ばれていた人が、部屋を出ようと言い出した。




私は、高杉さんの手を布団にしまい、女と一緒に、外に出た。







うの?「お久しぶりです。」




雪「お久しぶりです。此の糸さん・・・。」



此の糸「ふふふ・・・。やっぱり、雪さん・・・。さすが、特作隊のエース。」




雪「あなたは?」




此の糸「私は、特作隊の近衛 文香と申します。」




雪「近衛さん・・・。」



いたっけ?そんな人・・・。



近衛「知らないのは、無理もありません・・・。私は、あなたのように、任務に就けたことはありませんでしたから・・・。」



近衛さんが、俯いて、話し始める。



近衛「私・・・。どうしても、特作隊に入りたくて、身体を使って、特作隊に入ったんです。審査員全員と寝ました。」



マクラ審査って噂は、本当だったんだ・・・。



それだけ、誘惑が出来るのも凄いけど。



近衛「でも、やはり、実力が無いのは明らかで、付いていけなくなりました。ミスも沢山しました。そんなときに、この高杉晋作の愛妾の任務が来たのです。私は、人生をかけて、任務を遂行しようと思いました。ここに来て、準備をしている時に・・・。」



雪「あの、彼氏さんに出逢った・・・。」




近衛さんは、頷いた。




近衛「最初は、遊びだった・・・。でも、あの人、本当に、私を愛してくれて・・・。」



雪「で・・・。任務をブチったの?」



近衛「未来の人間が、迎えに来たらダメ元でお願いしようと思ったの。でも、来たのは、スノークィーンだった。もうダメだと思ったわ。でも、あなたは、私を見逃した。最初、信じられなかった。」



まぁ、あそこで、見逃した私も自分自身信じられなかったら。




近衛「そこで調べたら、あなたがうのになってくれたと、わかったの。もし、私の事を、報告しようものなら、あなたのことも、上にぶちまけてやろうとも思ったわ。でも、あなたは、私の事を、庇ってくれた。だから、あなたが大変な時は、私が、うのをと思って来たんだけど・・・。高杉・・じゃなくて谷さん、『うのじゃないっ!』って、そればっかり。代わりになれない。どんだけ雪さんの事が好きなのよって感じで・・・。」




私は、先ほどの高杉さんを思い出していた。



雪「あの人の感は凄いから。」



近衛「ふふっ。そうね。高杉さんが、亡くなった後は、尼になりたいと言ってる人がいて、うのになる手配はしてるから、それまでは、あなたにお願いしても良い?」




雪「はい。尼さん手配してくれたのね。私もしようと思ってたから、ありがとう。」




近衛「いいえ。彼とのこと黙っててくれて、感謝してるの。雪さんが、黙っててくれたおかげで、私は、一瞬だけ、母親になれたから・・・。」




雪「一瞬?」



近衛「死産だったの・・・。まぁ、未来だったら、確実に助かった命だけど・・・。帰って産む勇気は無かったわ。それに、彼と離れるのが嫌だったの・・・。」




雪「そう・・・。お幸せに・・・。」




近衛「ありがとう。でも、雪さん、変わったわね。未来で、あなたを見かけたときは、怖くて、冷たい感じだったのに、今は、違う。あなたもここで、好きな人がいるの?まさか、高杉さん?」



雪「好きな人なんていないよ。」




本当の事は言えない。




どこで、情報が漏れるかわからない。




近衛「そっか。じゃあ、私は、帰るわ。何かあったら、何でも言って?」




そう言うと、彼女は、タブに入力して、変装を解いた。




私は、変装に使っていた着物を借りて、高杉さんの元に戻った。





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