千年の時空を越えて




二回目の長州征伐が、失敗に終わった。



将軍も、お上もこの世を去られた。



そして、伊東さんが、脱退をして、少しすると、雪が、長州へ行くという。











雪「お願いしますっ!」




土方「ダメに決まってるだろ?」




雪「私には、未来のお役目があるんですっ!」




土方「そんなのどうとでも言える。お前は、未来のお役目が、あれば、何でも許されると思っているのか?」




雪「思ってません!でも、私は、この時代に来て、あなた達の側に、いますが、未来の人間であることには変わりない。歴史を変えてはいけないんです!そのためには、長州へ行かなくては、いけないんです!」





さっきから、ずっと、このやり取りだ。









たまたま、その場にいた僕の前で、やり取りする雪に、助け舟に見せかけて、理由を言わせる。




総司「何故、長州に行かないといけないんですか?理由も話さないで、行きたいだけでは、許可なんて得れない事くらい、雪もわかってるでしょ?」




雪「それは・・・。」




土方さんが、書簡から視線を雪に、移した。





すると、雪がゆっくりと話し出す。





雪「長州藩士、高杉様の最期を見届けるお役目に行くのです。」



土方・総司「え・・・?」




総司「それって、どういう事?」







見届けるって、死ぬの?




雪「彼には、史実では、“うの”と呼ばれる、愛妾がいます。本当は別の人が、なるはずだったんですが、成り行きで、私が、その人になったんです。史実に、高杉様の最期が記された物があるんですが、そこにうのが存在するのです。だから・・・。」




土方「行きたいと?」




雪「歴史は些細なことで、変わってしまう・・・。それが、未来に、どう影響するかわかりません。だから、私が、うのさんとして、やるべき事をするんです。終われば、すぐに戻ってきます!お願いしますっ!」




妾のする事って・・・。触れさせてるの?




総司「妾ってさ・・・。高杉の・・・。」




雪「何も・・・いや・・・。キス・・・接吻は、何度か、されました。すみません。でも、それ以上は、ないです!」




やっぱり・・・。





雪「黙ってて、ごめんなさい・・・。」




総司「許さない。」




そう言うと、僕は、雪を抱き寄せて、接吻をする。




苦しそうに、雪は、僕の背中を叩いているが、絶対、許さないからっ。





バシッ!





総司「痛っ!」




土方さんが、僕の頭を叩き、僕らを、剥がした。




土方「お前、人の部屋で、しかも、俺の前で、何やってる?」




総司「一つは、消毒。もう一つは、土方さんに対して、“雪は僕のだ”という、見せ付けです。」




僕は、土方さんにも牽制した。




だって、手当てを受けてから、土方さんは、明らかに、熱のある眼で、雪を見てるから・・・。




まぁ、雪は、それに、気付いてないけど・・・。





土方「うるせぇよ!」




そして・・・。




雪「お願いします!行かせて下さいっ!」




改めて、頭を下げる雪・・・。





土方「わかったよ・・・。その代わり、こちらの動きは、絶対に言うな。あちらの情報を、取ってこい。わかったな?」




雪「ありがとうございます!」




僕は、部屋を出て行く雪に付いていく。





部屋までくると部屋の中に押し込み、抱きしめた。





雪「総司様・・・?」




総司「本当は、凄く嫌だ・・・。他の男の所に行かせるなんて・・・。」




雪「高杉様の病では、もう、きっと、何も、出来ませんから・・・。」




総司「病・・・。何の?」




雪「労咳です・・・。」




総司「っ!」




雪「だから・・・。」






死の病・・・。




死ぬと、知ってて行くという雪は、とても辛そうな顔をしていた。




この顔を見たことがある。




僕が、労咳だとわかったとき・・・。




この病で、僕が、死ぬと告げたときの顔だ・・・。





総司「わかったよ・・・。」




でも、僕は、雪を抱きしめ直して、何度も接吻をした。




そして、僕は、もう一度、雪の鎖骨に、口付けの痕を残して見送った。
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