千年の時空を越えて
大坂八軒屋の京屋忠兵衛方に着いた。
山崎さんは、浅い息を繰り返して、意識が朦朧としている。
私は、握っていた手を離して、土方さんと近藤さんを呼びに行った。
雪「近藤局長、土方副長・・・。山崎様に最期の挨拶をお願いします・・・。」
近藤・土方「・・・・っ。」
近藤「わかった・・・・。」
二人が、部屋に入り、声がする。
時折、鼻を啜る音もする。
泣いてるのは、きっと、近藤さんだろう。
しばらくして、二人が出てきた。
土方「後は、お前がいてやれ・・・。」
雪「はい。」
私は、山崎さんの側に行き、手を握った。
指先が冷たくなっている。
雪「山崎様・・・丞様・・・。助けであげれなくてごめんなさいっ!ごめ・・・っ・・・。」
すると、山崎さんが、うっすらと目を開けた。
雪「山崎様っ!」
何かを話している。
私は、口元に耳を寄せる。
山崎「雪・・・。泣かんとって・・・。俺・・・。雪・・・笑う顔・・・やから・・・。これから・・・守ってあげれんくて・・・すまん・・・。」
山崎さんは、目をゆっくり閉じた。
雪「嫌っ!山崎様っ!山崎・・・さっ・・・。うっ・・うっ・・うっ・・・・。」
山崎さんは、息をひきとった。
その日の夜。
土方「入るぞ・・・・。」
雪「土方様・・・。山崎様が・・・。」
土方「あぁ。こいつが、助けたわらしだが、親がわかって、親に返した。」
雪「そうですか・・・良かった・・・。」
土方「なぁ・・・雪・・・。正直に答えろ。刀で戦うやり方は、もう、古いのか?」
真剣に見つめてくる土方さん。
雪「はい。刀の時代は終わります。」
土方「はぁ・・・。そっか。やはりな・・・。雪、気持ちを切り替えろ!山崎の代わりはお前だろ?」
山崎さんの代わり・・・。
そうだよね。
雪「はい!山崎様の分まで、人は殺せませんが、頑張ります!」
土方「お前は、その方が、山崎も喜ぶ。」
雪「はい!」
私は、山崎の供養をした。
雪「山崎様・・・。見てて下さい。山崎様よりも優秀な監察をしますからね!」
手を合わせて、一礼をしてから、土方さんと一緒に部屋を出た。