千年の時空を越えて
コレって、どうすれば?
新選組は、江戸城で、慶喜公の護衛を承っていた。
私は、サボリ・・・。
雪「はぁ・・・。」
私は、屋根に登り、浮かぶ雲を見ていた。
最近のお気に入りだ。
雪「ここから見る夜空、大好き。早く、夜にならないかな~。」
すると・・・。
コツン。
ん?何?
小石だ・・・。
鳥か?
キョロキョロするが、上にはいない。
コツン。
また、石が、飛んできた。今度は、下から。
屋根に、へばり付いて、下を見る。
すると、男が、ニコッと笑った。
「そこへわしを案内しろ。」
雪「ヤダ。ここは、私のお気に入りですから。」
首を引っ込めると、また、石を投げられた。
雪「何だよっ!」
「ここは、わしの城・・・。お前が案内するのは当然であろう?」
雪「はぁ?わしの城?」
「あぁ。」
雪「冗談よしてよ。この城の主様は今、つまらない何かの話し合いをしてるの!そんな嘘吐いたら、首落とされるよ?」
「そのつまらない話し合いを抜けてきたのだ。」
雪「え・・・?」
よく見ると、画像で見たことある顔だ・・・。
私は、青ざめた。
マズい・・・。
首落とされるのは、私だよ・・・。
私のバカッ!
ちゃんと、確認しておけば良かった・・・。
私は、裏方ばかりで、表の方とは、ほとんど、会わないように、土方さんに頼んでいたのだ。
まぁ、未来を知る者を他に知られるというのは、危険だからだ。
慶喜「おい!そこの者!聞いておるかっ!早よう・・・。あっ!」
ん?
あぁ、見つかりかけたのか・・・。
仕方ない・・・。
私は、屋根から飛び降りて、慶喜さんのまえに立つ。
そして、お姫様だっこした。
う゛・・・重い・・・。
雪「しっかり掴まってて下さいね?慶喜様?」
私は、壁を伝い、屋根に登った。
私は、慶喜さんを下ろして、手をプルプル振った。
慶喜「おぉ!なんと、いい眺めじゃ!お主、名をなんと申す?」
やっぱり言わなきゃだよね・・・。
雪「申し遅れすみませんでした。私は、新選組で、組長をされてる方達の小姓をしています。乾 雪之助と申します。」
慶喜「新選組か・・・。戦いが好きな奴らだな・・・。」
雪「ふふっ。そうですね・・・。」
慶喜「新選組か・・・。お前は、何故、ここにいた?非番とやらか?」
雪「う゛・・・。まぁ、そんな所です。」
慶喜「わしと同じか?」
雪「・・・はい。」
慶喜「お前は、息抜きに良い場所を知っているのだな・・・。」
この人は、どこにいても、お供がいるもんね・・・。
慶喜「のぉ、乾・・・。わしをここから連れ去ってくれぬか・・・。さっきも、わしをここに連れてきた。頼む・・・。」
泣きそうな顔で、見つめられる。
雪「では・・・。今宵、私のとびきりの場所へご案内致します。って・・・ダメですよね・・・。大奥だよね?確か・・・。」
慶喜「いや!今宵、約束じゃ!お主、わしの寝床まで迎えに来るのじゃ!」
雪「えぇ!?『抜けてくるよ』とかじゃないんですか」
慶喜「そんなの無理に決まってるではないか!よいな!お前が迎えに来るのだぞ!でないと、ここで、油を売ってたこと、近藤に言いつけてやるぞ!」
雪「なっ!そんな事したら、土方さんに、めちゃくちゃ怒られるじゃない!わ、私だって、もし、私の事言ったら、あなたを探してる奴に、あなたを突き出しますからっ!」
慶喜「なにをぉ!お主!将軍に向かって!」
雪「何が、将軍だっ!今は、私がいなければ、ここから降りれない、ただの男だろっ!って・・・あ・・・。またやっちゃった・・・。」
慶喜「ただの男・・・。確かに、そうじゃ。初めて、そんな事を言われた。ハハハッ。愉快。愉快。お前、面白いのぉ!ここにいる間、わしの小姓をしろ!よいな!」
雪「えぇ!?既に、命令だし・・・。」
それから、しばらく、会話を交わした。
「慶喜様!・・・慶喜様ー!」
雪「呼ばれてますよ?」
慶喜「あぁ。」
雪「出て行ってあげないと、あの人、罰を受けるんじゃありませんか?」
慶喜「だろうなぁ。そろそろ行くか・・・。乾・・・。今宵の約束、忘れるでないぞ!」
雪「ハイハイ。」
私は、苦笑いをして、また、慶喜さんをお姫様だっこして、飛び降りた。
帰って行く後ろ姿を眺めながら、私は思う。
身分のある人は、ある人で、悩みがあるのね・・・。
まぁ、息抜きするくらいなら、良いよね?
私も、踵を返した。