千年の時空を越えて
天上人対警備人~総司side~
僕らは、江戸城に入り、慶喜公の警護に当たっていた。
雪は、幕府の人間に事情がバレるといけないから裏方で、手伝っていた。
まぁ、毎日、猫のように、屋根の上で、日向ぼっこをしてるんだけど・・・。
ある日、雪は、雪の物ではない匂いを纏っていた。
抱きしめると微かに、漂う香の香り・・・。
僕の胸は、モヤモヤしたが、こんな事を問すなんて、女々し過ぎる。
何かの拍子に付いてしまった?
ぐるぐると頭の中を色々な事が回る。
そしてある夜。
雪は、こっそり、部屋を抜け出した。
僕は、後を付いていったが、途中で見失った。
総司「また、未来のお役目でも、あるのかな・・・。」
最近では、未来のお役目の時も、できるだけ言ってくれるから、安心してたけど・・・。
布団の中で、待っていると、雪が、帰ってきた。
僕は、今、気付いたフリをして声をかける。
総司「あれ?雪・・・。どっか、行ってたの?」
雪「起こしてしまって、すみません。はい。夜空を見てきました。」
何だ・・・。
雪が、ここに来て、空が近いと喜んでいたのを思い出す。
総司「僕も、誘ってくれれば、良かったのに・・・。」
雪「すみません。」
ギュッと抱きしめたとき、固まった。
この香り・・・。
僕は、雪の匂いだけには敏感だ。
雪の香りとは違う、前に雪に付いていた香りが、雪から、また漂う。
雪は、既に、眠ってしまっている。
ねぇ、雪・・・。誰と会ってるの?
匂いが付くって事は、抱きしめたりしないと付かないよね。
このくらいの匂いだと、同じ部屋にいたくらいのものかもしれないけど・・・。
僕の胸は、黒く重いもので、塗り潰されていった。