千年の時空を越えて
板橋に着き、近藤先生を探した。
いたっ!
僕は、思わず、叫ぶ。
総司「近藤先生っ!」
雪「静かにっ!行きますよ!」
雪に案内され、近藤先生がいる牢屋に忍び込む。
総司「先生っ!」
近藤「総司?」
総司「今すぐ、お助けをしますので!」
近藤「総司。大丈夫だ。俺は、大久保大和だ・・・。」
雪「近・・・大久保様・・・。それは、バレてしまいます・・・。高台寺党の人が、来て、近藤様とバレます!」
近藤「ならば、それでも、構わぬ。」
総司・雪「え!?」
どうして・・・?
僕は、何とか、溢れそうになる涙を止めた。
近藤「雪・・・。悪いが、総司と二人にしてもらいたい。」
雪「はい・・・。」
雪が、外に出たのを確認すると、近藤先生が話し始める。
近藤「よく、こんな所まで来たな。総司。」
総司「逃げましょう!」
近藤先生は、首を横に振る。
総司「どうしてですか!?甲陽鎮撫隊の局長は、先生ですっ!近藤先生がいなくなるなんて・・・っ。僕は、僕は・・・っ。」
近藤「総司・・・。お前は俺のために、色々と良くやってくれた。汚い役目も、何も言わずにやってくれた。礼を言う。」
総司「ヤだな。先生・・・。先生の為なら、何でもしますよ。だから、そんな事、言わないで下さい・・・っ。最後みたいじゃないですか・・・っ。」
近藤先生は、優しく笑い、僕を撫でた。
近藤「それに、俺は、お前をわらしの時から、見てきたのに、お前の幸せまで奪った・・・。だから、お前が、雪と幸せにしている姿を見るのが嬉しかった・・・。総司・・・。としを、としを頼んだぞ!」
総司「い・・嫌です!先生が、この世を去られたときは、この総司も隣で、切腹を・・・っ。」
近藤「馬鹿っっ!!お前まで、いなくなったら、としや雪は、どうする!!いいか、としを支えてくれ・・・。そして、雪を・・・雪と、今度は幸せになりなさい。もし、切腹などして見ろ!お前は、破門にする!わかったな?」
僕は、泣きながら、お願いした。
総司「お願いです!先生!そんなの嫌だ!一緒に、逃げて下さい!」
雪が、僕達に近づいた。
雪「総司様・・・。見張りが帰ってきました・・・。」
総司「先生っ!一緒に・・・っ。一緒に、来て下さい!お願いします!」
近藤「総司・・・。わかってくれ!としを頼んだ・・・。」
総司「近藤先生!」
ガタッ。
近藤「っ!早く行け!雪っ!総司を頼む!」
雪に、引っ張られて外に出る。
僕は、何度も、何度も、後ろを振り返る。
すると、最後に、見えた近藤先生は、優しい笑みを浮かべていた。
町の外れまで走った。
雪「総司様・・・。」
僕は、雪に、怒りをぶつけた。
雪の肩を掴み、揺すった。
総司「・・・っんでだよっ!なんで、雪は、もっと早く、教えてくれなかったんだよっっ!あの場所で、先生が捕まるってわかってたんでしょっ!?何でだよ!!!なんで・・・っ。」
雪は、何も言わずに、苦しそうに、唇を噛み締めて、何度も小さな声で、「ごめんなさい。」と呟いていた。