千年の時空を越えて
雪「え?」
節「夕餉が終わるまでに、早よ逃げて。私、上手いこと言っておくから。今日は、あの日やから・・・。」
ぎゅっと抱きしめていた手に力がこもっている。
震えてる?
雪「あの日って?何があったか話してくれますか?」
背中をさすりながら言葉を待った。
節「うん…。実は、最近、入った仮同志の皆さんが・・・。」
仮?そんなのあったんだ。
節「先日から度胸試しだと、部屋にいきなり、現れて、それで・・・。それで・・・。」
雪「なっ!それって・・・。」
お節さんが力無く頷く。
節「皆、襲われて、辞めていったの。」
雪「助勤さんたちには?」
お節さんは、首を横に振る。
節「言ったら、もっと、ひどい目にあわすって脅されて・・・。」
雪「じゃあ、お節さんは何で、残ってるの?ここにいたらひどい目にあうのわかってて・・・。」
節「うちは、他の家と違うんよ。親が罪人やゆうて連れて行かれてね。それ、知られてどこも雇ってくれんの。近藤さんが、拾ってくれて、働かせて、もらっとんのよ。だから・・・。」
何だか、胸が、潰れそうに痛い。始めて・・・。こんな感覚。
雪「私、そいつらのこと、許せない。」
怒りで、握った拳がプルプル震える。
節「おいわちゃん?」
雪「私に、任せて。お節さんの大事な場所は、私が、守る。だから、今晩は、別の部屋にいてください。」
節「そんなん、あかん!うちもおる!」
どんなに説得しても、お節さんは、引いてくれない。
雪「わかった。じゃあ、二人で、鬼退治しよ!」
そう言うと、お節さんは、にっこりと、笑ってくれた。