千年の時空を越えて
昔、試験管ベイビーというものがあり今では、試験筒ベイビーというものが一般的だ。


ただ、日本では、人口が減りすぎて、若いうちの卵子冷凍保存が当たり前になり、本人承諾の元で、精子提供者の精子と掛け合わせ、受精卵にし、母親のお腹代わりの試験筒で胎児となる。


そして、臨月を迎え、誕生するという流れだ。



親が、いない場合も多いが、施設で共同に暮らす。



そして、高度な、教育を受けて、成人していくのだ。



最初は、反対意見も多かったようだが、今では、親がいる子供といない子供は半々くらいだ。それ程、人口が減っていた。



だから、その出生のことで、差別を受ける事はないのだ。



私は試験筒で産まれた。

<雪>という名前は、誰が付けたか不明。



前から、武里博士の事を疑っていて、無断で、遺伝子検査をして、明確になった。



彼に問いただすと、あっさりと認めた。


前から、特別視されていて、恋愛感情かと疑ったが、検査をして、特別視の理由が娘に対するものだとわかって安心した。


今では、父親愛全開だ。これが父親愛なのかが少し疑問だがそういうことにしている。


武里「もう雪が足りなーい」


また、ぎゅっと抱きしめられチュチュと何度もキスをしてくる。


雪「ちょっ、ちょっとやめて下さい!」


博士の腕から逃れようとすると、ガツンと、博士が拳骨を食らう。


武里「痛いなぁ~。田沼君。」


博士の右腕の田沼さん。


田沼「すいません。そういうのは、私のいない所でして下さい。これ、先日のデータです。」


雪「こんにちは。田沼さん。」


田「こんにちは。雪さん。今度、ご飯行きませんか?川口も誘って。」


雪「あ!良いですね!じゃあ、陸にも声かけておきます。」


武里「ちょっとぉ~!僕の雪を勝手に、デートに誘わないで!僕も行くからね!」


とぎゅっと、後ろから抱きしめられる。


胸のあたりで組まれた腕を、解きながらくるっと向き直り上目目線で博士を見る。

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