3つ星物語
「とりあえず、ソフトクリームでも買ってくる」
 
またも唐突な彼の切り口。

「いらないよ。何で?」

「遊園地っていったら、ソフトクリームだろ」
 
そう云い残して彼までもいなくなってしまった。
 
休日の、遊園地に、ひとりぼっちだ。
 
私はとりあえずそこら辺のベンチに腰を下ろした。
 
体感ぐるぐるマシーンから聞こえてくる絶叫や、子どもたちのはしゃぐ声で空気は賑わっている。
 
ふと、空を見上げた。
 
ここの空もなかなかのものだった。
 
地上にいる人間が楽しみでいっぱいだからだろうか。
 
空は、優しく笑っているように見えた。

「おまたせ」
 
声がして、ふと見上げると、森村くんがバニラソフトを両手に持って戻ってきた。

「ほれ」 

< 123 / 238 >

この作品をシェア

pagetop