3つ星物語

チョコレートの箱を何個 空にしただろう

「あ、あんまり甘くなくてウマイ。私でも食べられる」
 
唇の端にココアパウダーをつけながら玖生は云った。

「せっかく上手くできたのにね。伊津くん、食べないで帰っちゃったのね」
 
素手で食べている玖生とは違い、小さなフォークで口に運びながら紗生は云う。
 
ここは私の自室だ。
 
ガラスのテーブルの上に、今日直哉くんの為に作ったガトーショコラを紗生たちに振舞っていた。
 
私はうさぎの大きなぬいぐるみを抱いて、またぐずっていた。
 
このぬいぐるみは、直哉くんからプレゼントされたものだ。うさぎは私の好きなキャラクターだ。
 
ピンクのうさぎでも白いうさぎでもブルーのうさぎでも、うさぎならなんでも可愛い。
 
今日、彼に買ってもらった木製のうさぎは、まだラッピングをほどかずに、机の上に投げ出したままだった。

「女の子の知り合いの1人や2人でぇ。南生はいつまでぐずぐずしてるの。そもそも伊津くんは共学に通ってるでしょ。1人や2人じゃ済まないよ」
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