3つ星物語
私はそんな彼女を引き止めた。

「あの……紗生が彼氏を呼んで裏庭って――?」
 
初めて聞く話だった。ここは女子校なのに。

「ああ、紗生っていつも裏庭でお弁当食べてるんだよね~。男子高の彼氏と逢瀬しながら」

「そうなの。どうもありがとう」
 
紗生が彼氏と逢瀬……森村くんの飄々とした性格からすれば、女子校の壁を飛び越えるのも難無いだろう。
 
直哉くんはそんな道理に外れたことは決してしない。
 
どんなにお互いが会いたくても、だ。
 
私は肩を落とし、とぼとぼと職員室へと向かっていた。
 
放課後になったことだし、二堂先生はもう没収した携帯を取り戻してくれるだろう。
 
直哉くんからの連絡は入ってるだろうか。今日の放課後、会おうかとかお誘いメールが来ているだろうか。
 
昼間ずっと気にかけていたことが、急に不安になりだした。返信もしないだなんて、直哉くんは何て思うだろう。
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