3つ星物語
ふう、と私は息を吐いた。
 
海と砂浜の境界線みたいな、さざなみのあるはげかかったネイルを、私はリムーバーで落としていた。
 
コットンで丁寧に拭って、爪先に息をかけた。
 
さて、何色に塗ろうかな。
 
ピンク、ブルー、アプリコット、オレンジ……私は10本ほどのネイルの小瓶を、てんてんと机に並べた。
 
宝石のようにキラキラとしている。
 
こうやって並べると綺麗だなぁ。色を手の先に乗せられるのって、幸せを感じる。
 
爪先が、手が、うきうきし始める。
 
小指だけ真っ赤にして、あとはさくら色にしようかなと思う。
 
化粧なんてしないし、髪の毛も適当に伸ばしたままだし、どちらかといったらお洒落には興味はないけれど、ネイルだけは好き。
 
万引きは卒業した。100均で買ったものだけれど、100万はする宝石に見える。
 
私はまず、ルビー色の小瓶を手にした。
 
と、同時に頭をスパーンと叩かれた。

「古瀬。ここはお前の部屋か」

「あ」
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