3つ星物語
胸に海の冷たい波が押し寄せてくるように、さーっとこころが冷たくなった。
 
伊津くんにしても、大地にしても、南生やこの子のような、ほっぺを舐めたらイチゴの味がするような可愛らしい子を選ぶんだね……。
 
私は女の風上にも置けないってことだ。

「大地に直接聞いてみればいいじゃないの。ね、泣いたりしないでさ」
 
私はイチゴの王女様のあたまに手を置き、撫でた。
 
なんだか、そうしたくなったからだ。庇護したくなるような子。

「……大地くん、優しいから、本当のことは言わないもの――」
 
彼女はイヤイヤをするように、顔を左右に振った。
 
本当のことを言わないのが優しさなのか? 私は首を捻った。

「じゃあ、私が本当のことを言うわ。私と大地はただのダチ。それ以上でもそれ以下でもなんでもない。泣き落として大地の気を惹こうだなんて、これっぽっちも思っちゃいないわ」
 
すると彼女は、ゆるゆると顔を上げて、私の瞳を覗き込んだ。まるで真実を探すかのように、すがるかのように、小動物のような目で。

「……本当?」
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