3つ星物語
好きになって半年になるけれど、どうも前に進めない、といったどこにでもあるような話だった。
 
押せ押せ、と私は勧めたのだけれど、やれ断られたらもう合わせる顔がないだとか、今は彼女の姿を見ているだけで幸せだとか、なんとも結論の出ない女々しい相談にのっていたのだった。

「ご飯は?」

「ファミレスで済ませた。おごってもらった」

「まったく玖生は……遅くなるんだったら、ちゃんと連絡ぐらいしなさいな」

「ごめ~ん」

こころの中では、まったく悪気はなく、私は南生の脇をすり抜けて2階へと上がった。

2階には3部屋あって、それぞれ私たち3つ子の部屋だった。

階段を上ってすぐ左が南生の部屋で、それと隣り合わせの部屋が紗生のとこ。トイレを挟んで独立したところが私の部屋だった。

壁続きではないのだけれども、やれ電話している声が煩いだの、音楽のボリュームを下げろだの、時たま南生や紗生から苦情(クレーム)がくる。姉というか、母親が2人余計に多くいるみたいだ。
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