3つ星物語
「うん」
怒るでもなく、呆れるでもなく、彼は屈託なく笑ってみせる。
「バレないように、口数減らしてみたんだけど」
「解るって、雰囲気で……ってか、ぱっと見、気づかなかったけど」
伊津くんは、あたまの後ろをかきかきする。
その時、ふと伊津くんの携帯の着信音が鳴った。
彼は制服のポッケからそれを取り出して開く。
「南生ちゃん、さっきの待ち合わせ場所にいるって。戻ろうか」
「――うん。南生、今日、日直らしいから約束の時間に遅れたんだと思う」
「いや、時間ぴったりだよ。玖生ちゃんと僕が来るのが早かったんだ」
そう言って伊津くんはくるりと向きを買え、今来た道を戻っていく。
もう私の手を握ったりはしない。
私は玖生なのだ。同じ顔をしているけれど、南生ではなく、玖生なのだ。
伊津くんは私のものではないのだ。
「玖生ちゃんも、行こう? 紅茶、好き?」
「甘くないものなら」
怒るでもなく、呆れるでもなく、彼は屈託なく笑ってみせる。
「バレないように、口数減らしてみたんだけど」
「解るって、雰囲気で……ってか、ぱっと見、気づかなかったけど」
伊津くんは、あたまの後ろをかきかきする。
その時、ふと伊津くんの携帯の着信音が鳴った。
彼は制服のポッケからそれを取り出して開く。
「南生ちゃん、さっきの待ち合わせ場所にいるって。戻ろうか」
「――うん。南生、今日、日直らしいから約束の時間に遅れたんだと思う」
「いや、時間ぴったりだよ。玖生ちゃんと僕が来るのが早かったんだ」
そう言って伊津くんはくるりと向きを買え、今来た道を戻っていく。
もう私の手を握ったりはしない。
私は玖生なのだ。同じ顔をしているけれど、南生ではなく、玖生なのだ。
伊津くんは私のものではないのだ。
「玖生ちゃんも、行こう? 紅茶、好き?」
「甘くないものなら」