続・元殺し屋と、殺し屋
「ところで、レイが帰ったら、カナメ役がいなくなるな」
暫く考えた恭真が、クイッと窓際に立っていたある人物を見た。
「月宮。
レイの代わりに、カナメ役、やってくれるか?」
月宮くんは文化祭実行委員のため、何かの役とかになったり裏方をしたりとかはしないけど、こうして全部の劇の練習に立ちあっている。
「…僕が?
久保田がやれば良いじゃないですか?」
表情は変えないけど、嫌そうなオーラが漂っている。
「総司にはビデオを頼むから」
「ビデオ、ですか?」
「紅羽の演技のどこがいけないとか、どこが良いとかビデオに録画して、家で見てくるんだよ」
「そこまでしなくても良いのでは。
先々週や先週、神崎が監督の時はやっていませんでしたよ」
「レイはレイ、俺は俺。
頼んだからな、総司」
「りょーかーい」
そう言って恭真のスマホをかまえる総司。
裏方含め、男子は恭真・総司・月宮くんしかいない。
その中で澪鵺の代役を務められるのは、月宮くんだけだ。
…総司は女性恐怖症だから。
彼女である花菜にさえ近づけないのに、私に近づけられるわけがない。
そのことを配慮し、恭真は総司に“ビデオを撮る”と言う役目を渡したのだろう。
こうすれば、月宮くんが代役になるから。
恭真、頭良いよね!