続・元殺し屋と、殺し屋






それだけでも驚いたのに。

それ以上に驚くことがあった。




女性恐怖症で触れられないはずの総司くんが。

花菜ちゃんに、キスを落としていた。

観客席からもわかるほど、優しいキスだった。

…まぁ、これぐらいなら未成年でも良いだろう。

しょうがないな、目をつぶってあげるよ。……僕は一体誰だろうね?




お客さんの中でも、泣いている人がいた。

陽詩も必死に目頭を押さえている。

人一倍泣き虫な陽詩だけど。

ハンカチを忘れたみたいで、必死に手で拭っている。

僕はポケットからハンカチを取り出し、差し出した。

陽詩は小さくお礼を言って受け取り、涙を拭いていた。




総司くんに愛されて幸せオーラ満載の花菜ちゃんも綺麗だったけど。

やっぱり僕の隣で涙を流す陽詩が、やっぱり1番綺麗だと思う。

…本人には絶対言わないけど、ね。







舞台も無事終了し、僕らは体育館を出た。

陽詩がまだ感動の渦にいるため、僕は1人青空を眺めていた。




「あーしかし、良かったなぁ」




…独り言?

陽詩が気が付かないうちに動き、僕は独り言を言った主を探した。






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