続・元殺し屋と、殺し屋
独り言を言っているのは、黒髪でちらりとピアスの見える、真面目そうな男の人だった。
パンフレットを見ながら、1人でウンウン頷いている。
…誰なんだろう、この人。
「…あ、スミマセン」
僕がずっと見ていると、彼から話しかけてきた。
「今の劇、俺の弟が出ていたんですよ。
だから思わず、独り言を……」
アハハ、と照れたように頬を掻きながら彼は笑う。
…弟が出ていた?
「間違っていたらごめんなさい。
もしかして、総司くんのお兄さんですか」
「あ、そうです!
総司のことご存知でしたか!
俺は総司の兄の、久保田総太です」
「和泉氷です」
「あ、あなたが和泉さんですか。
総司から最近聞くんですよ」
まぁ紅羽たちと一緒によくバーに来るもんな。
…にしても。
お兄さんと総司くん、あんまり似ていないな。
言われてみれば笑顔が似ているかもしれないけど…。
自己紹介しなければ、気が付かなかったかもしれない。