笑って
「…な~んて事もあったか」

俺の緩い言葉に親友が笑う。

「お前の後押しがあったから、進めたんだ…ありがとう」

「ちょっ、止めろよ!気持ちわりーなぁ」

気持ちを素直に表現する親友と違って、俺はひねくれている訳で。真っ正面から礼を言われると恥ずかしいことこの上ない。

「本当に感謝してるんだぞ?」

「だぁ!もういいって!痒くなるだろーが」

クスクス笑う親友の頭を叩こうとして、そういえばさっき整えたんだとぐっと堪える。

「ったく、幸せですオーラ出しまくりやがって」

ブツブツと多少嫌味っぽく「俺の春はまだかねぇ」なんて呟いて、時計に目を向ければ定刻二十分前になっていたので慌てて退室しようとドアの取っ手に手をかける。

「圭吾」


確りとした声に振り向けば、椅子から立ち上がった我が親友が俺に向かって頭を下げてきた。
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