シオンズアイズ
ふたりは幼いころからの付き合いである。

同じ会社に就職できたのは、ひとえに香の父親のお陰である。

「うーん、シオンちゃんは秘書検定もってるんだって?
うちは商社だから、英語が話せるのもポイント高いよ。
それにシオンちゃんはスタイルのいい美人さんだしね!
まあ、人事部長に僕から推しておくよ。面接受けてみて」

子供の頃の香は病弱で、いつも青白かった。

体が弱いのに、なぜかいつもシオンの後にくっついてまわり、シオンは気が気ではなかった。

いつも香はあたしを気にかけてくれている。

「ありがと、香」

香はシオンの瞳を見つめながら昔を思い出していた。

昔―そう、とても昔だ。

まだ、人間と神々がもっと近い距離にいた頃。

神々だけではない。

魔性と呼ばれる種類の者達も近かった頃。

香は覚えているのだ。
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