シオンズアイズ
「ファル、せめてロイザとジュードの回復を待とう。でないと、シオン奪還は難しい」

ファルも頭では分かっていた。

だが!

香は静かな声で言った。

「シオンは言ったわ。白金族人間を欺くって。
彼らを騙して、仲間になったように見せかけて怪我を治し、逃げる時に備えると」

「欺く……」

ファルは思わず呟いた。

「彼女を信じましょう。月が二度巡る頃には助けに行きましょう。何とかそれまでには、足も回復してると思うから」

ファルは苦しげに唇を噛んだが、掠れた声で呟いた。

「……わかった」

「その間に策を練るのよ」
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