シオンズアイズ
その時である。

「……っ!」

背の高い、幹の太い樹木の側を通りすぎようとしたシオンの腕を、誰かが掴んだ。

心臓が止まりそうになりながらその手の主を振り仰ぎ、シオンは思わず眼を見開いた。

アイーダ!

途端にエリルの森で首に噛み付かれた恐怖を思い出す。

声すら出せないシオンを見て、アイーダはニタッと笑った。

殺してやる!

自分を差し置いてシオンとファルが結ばれなどしたら、業火に焼かれるより辛く狂おしい。

七色の瞳の乙女を殺し、ファルに絶望を味わわせれば、この気持ちもきっと楽になる。

この思いを遂げれば、たとえ死んでも悔いはない。
< 230 / 515 >

この作品をシェア

pagetop