シオンズアイズ
「…………」

それは指輪だった。

可憐な花びらはそのまま黄金と化し、茎が絡まるように薬指にはまった。

「どうだ?痛くないか?」

「うん」

「そうか」

ふたりは向かい合い、互いを見つめた。

「ピアス、なくしちゃって……ごめんなさい」

ファルは掌で、そっとシオンの首に触れた。

それから眉を寄せて、苦しげにシオンを見つめる。

「あの時は……守ってやれなくてすまなかった」

「彼女はあの時、人間じゃなかったし……もう亡くなったんだけど」
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