シオンズアイズ
「お時間は取らせませんので、どうぞこちらに」

「でも」

せめて香に告げてからと思い、シオンは辺りを見回した。

……いたけど、かなり離れている。

しかも、瞬く間に兵達で見えなくなってしまった。

「宮殿内にはファル王子達もいらっしゃいますのでご安心を。さあ、王女の元へ。こちらです」

「……わかりました」

シオンは呟くように言って頷くと、近衛兵隊長の後に着いて歩いた。

……王女様が私に何の用なんだろう……。

正直不安だけど、断るわけにもいかないわよね。

そう思っているうちに、あっという間に城門前に立つ王女の元まで歩を進め、シオンは彼女に頭を下げた。
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